東京・池袋で乗用車が暴走、歩行者などをはね、10人が死傷した事故で、24日、亡くなった親子2人の告別式が行われました。
この事故は先週、豊島区東池袋で、板橋区弥生町の旧通産省工業技術院の飯塚幸三・元院長(87)が運転する乗用車が歩行者などをはね、松永真菜さん(31)と娘の莉子ちゃん(3)が死亡し、8人がケガをしたものです。
24日午前、現場近くの斎場で、松永さん親子の告別式が行われました。
池袋暴走事故、悲しい親子の死、相次ぐ母親と3歳の娘を悼む声
東京・池袋で起きた暴走事故で、母親と3歳の娘の死を悼む声が相次いでいます。
亡くなった松永真菜さんの同僚は、
「(莉心ちゃんは)恥ずかしがりやで、ママのそばから離れないんですよ。
おいでおいでって言っても全然離れないかわいい子でしたよ」
と語っています。
また、事故現場に献花に訪れた人は、
「言葉にならないというか、かわいそうになっちゃって、(現場に)近づいたら涙が出るくらい痛ましい事件」
と悼んでいます。
24日午前、現場近くの斎場で行われた、松永さん親子の告別式の参列者は、
「受け止められないというか、いまだに信じられない気持ちで、なんで2人なんだろうっていまだにウソなんじゃないかって思ってます」
「(真菜さんは)本当に周りから愛されて、すばらしい人でした。
(莉子ちゃんは)恥ずかしがり屋でお母さんが一番大好きな女の子。
2人の命を無駄にしないためにも社会全体で考えていってほしいなと思います」
告別式には親族や真菜さんの専門学校時代の友人などが訪れ、2人との別れを惜しみました。
一方、今回の事故をめぐっては、車を運転していた旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長が車線を変更したあと、ガードパイプに接触し、そのまま加速を続け、相次いで事故を起こしていたと伝えられています。
警視庁は、飯塚元院長が最初の接触事故でパニックになった可能性があるとみて、本人の回復を待って実況見分に立ち会わせる方針です。
事故の原因は高齢者ドライバーの運転?年齢87歳の運転能力は?
今回の暴走事故で、飯塚さんが運転する乗用車は、二つの交差点に赤信号を無視して進入していたことが、警視庁への取材などでわかりました。
ブレーキをかけた形跡はなく、加速しながら次々と通行人をはねたと見られています。
交通捜査課によると、19日午後0時25分ごろ、豊島区東池袋4丁目の都道で飯塚幸三さんの車が道路左側のガードパイプに接触後、赤信号だった約70メートル先の交差点で男性をはね、速度を上げながら次の交差点にも赤信号で進入、自転車で横断歩道を渡っていた松永真菜さんと長女莉子ちゃんがはねられ死亡しました。
他の歩行者ら6人と飯塚さん、同乗していた80代の妻も重軽傷を負いました。
飯塚さんの車のドライブレコーダーには、ガードパイプ手前のカーブから徐々に加速する様子が記録されており、信号無視の様子も映っていました。
ガードパイプへの接触からトラックに衝突して止まるまでの約150メートルの間、ハンドルやブレーキを操作した様子がなく、現場の法定速度50キロを大幅に超えて走っていたとみられ、同課は運転ミスが原因とみて調べています。
これまでのところ、車に不具合などは見つかっていません。
警視庁によれば、運転していた飯塚さんは大けがをして入院していて、事故直後「アクセルが戻らなくなった」と話していたということです。
出典元:AbemaTIMES 池袋暴走事故で考える高齢者の運転
ところで今回の事故を含み、高齢者の運転による重大事故が後を絶ちません。
悲惨な事故を防ぐための議論は以前から繰り返されていますが、自動ブレーキなどの安全機能を備えた車限定の運転免許制度の創設を急ぐべき、免許年齢の上限を定めた「定年制」についても真剣に検討すべき、などの声があります。
平成29年に施行された改正道路交通法により、75歳以上は3年ごとの免許更新時に認知機能検査を受け、認知症の恐れがあると判断された場合は医師の診断が義務化されています。
医師により認知症と診断されれば免許取り消しの処分となります。
しかし池袋で事故を起こした男性は、一昨年の免許更新時に検査で問題は確認されていませんでした。
昨年中、「認知機能低下の恐れなし」と判断された後に死亡事故を起こした高齢者は210人を数え、高齢ドライバーに対する認知機能検査は必ずしも事故の抑止に結びついていないようです。
認知症は事故要因の全てではなく、高齢に伴う運動能力や反射神経の衰えなども事故に直結する要因と言えるので、認知機能検査による規制だけでは十分ではないと考えられます。
昨年、政府の未来投資会議は65歳以上の雇用拡大に伴い、高齢者向けに自動ブレーキなどを備えたアシスト車限定免許の創設を打ち出しました。
導入への議論、もしやるなら、従来免許の強制的な返納とセットとすべきでしょう。
警察庁や各自治体は高齢者に免許の自主返納を呼びかけ、公共交通機関の運賃割引が受けられるなどの特典を付していて、これに応じる高齢者は年々増えていますが、まだ限定的です。
高齢者からすれば、生活の足を奪われるなどの強い反発があるからです。
自動運転の技術が開発されれば問題は解決するとの意見もありますが、普及を待つまでに事故は起きてしまいます。
急ぐべきは一定の上限年齢による「定年制」かもしれません。
自分が高齢者になった時のことを考えると、多少の不便は否めませんが、年齢による制限は最も平等な手段と思われます。
これは高齢ドライバーと、その家族を守るためのものでもあるので、真剣に向き合うべき課題でしょう。
またもやトヨタ・プリウスの事故、以前もブレーキ問題が議論に
今回の事故では、高齢の男性がアクセルとブレーキを踏み間違えていた可能性が高く、認知機能にも問題があるかもしれないと言われています。
警察庁によれば、2018年に死亡事故を起こした75歳以上のドライバーは前年比42人増の460人で全体に占める割合は14.8%と過去最高。
しかも、事故原因を分析したところ、ブレーキやアクセルの踏み間違いなど「操作不適」が136人と30%にも上っているそうです。
間違いは誰にでもありますが、このような運転操作ミスで何の罪もない人々の命が奪われるなど、あまりに理不尽なことです。
そんな中、運転していた乗用車がトヨタ・プリウスであったことにも注目が集まっています。
事故の速報が流れた段階から、87歳男性が操っていた「プリウス」にも暴走の遠因があるのではないかというような憶測がSNSで飛び交いました。
現場で大破した車種がニュース映像で映し出され、それがプリウスだと分かり議論になったものと思いますが、なぜこのように叩かれるのでしょうか。
まず考えられる理由としては、過去の事故による「暴走」のイメージが強いことです。
17年10月、東京・吉祥寺の駅前で、85歳の男性が運転する自動車が暴走して歩行者を次々と跳ねて7人がケガをするという「老人暴走」が大きく報道されましたが、これもプリウスの事故でした。
この事故では、暴走したプリウスが、踏み間違いにも対応をしている新型ブレーキ搭載車だという指摘がネットで相次ぎ、なぜ作動しなかったのかという疑問の声も上がりました。
また、16年には福岡市の病院にタクシーが突っ込んで、10人が死傷するという痛ましい事件が大ニュースとなりましたが、これもプリウスの事故でした。
その事故では、過去5年間に無違反だった64歳の運転手が、「ブレーキを踏んだのに止まらなかった」と主張したことも大きな注目を集めました。
ほかにも、プリウスの暴走は時々起きており、ネット上では、コンビニなどに突っ込んだプリウスの事故画像が溢れています。
トヨタ的には名誉毀損で訴えたいところでしょうが、SNSでは暴走が多いことを揶揄して「プリウスミサイル」などというハッシュタグまで存在する始末です。
こういうネガティブなイメージに拍車をかけているのが、一部から指摘される「不具合」の可能性です。
例えば、先述の福岡の暴走では、過失運転致傷罪に問われた運転手の裁判で、弁護側は事故後に車の検証に関わったトヨタ社員を証人尋問しました。
『弁護側は、「プリウスのブレーキを踏んだのに進んだ」という不具合情報が国土交通省に報告されていることについて尋ねたが、男性社員は「(現象として)あり得ない」との見解を示した』
出典元:朝日新聞・福岡版 2018年10月5日
つまり、「暴走=踏み間違い」ということになっているのですが、実はその中には車両の不具合も含まれているのではないかというわけです。
ただ、世の中に出回っているプリウスの数がかなり多いため、不具合の「申告」がかなり多いからといって即座にプリウスに問題アリという話にはならないでしょう。
プリウスは17年1月時点で累計400万台売れた超人気車種で、日本全国のいたるところを走り回っていて、意識して探す必要もないくらいです。
絶対数が多いので不具合の報告も多くなるのは当然ですし、なおかつ印象に残りやすいメジャー車であれば、他車種よりも「事故」の印象も人々に脳裏に残るのかもしれません。
事故画像がたくさん撮られて拡散されているのも、数の多さがゆえでしょう。
ただ、プリウスの操作性の問題点については、以前から指摘されていたようです。
シフトレバーの操作やペダルの配置の問題などが取り上げられたことがあります。
しかし、安全運転を心がけるドライバーであれば、自分の車の特性を把握していない時点でアウトではないでしょうか。
「高齢ドライバー」と「トヨタ・プリウス」、このふたつが重なっての事故、余計に互いにイメージが強くなってしまったのかもしれませんね。
池袋暴走事故は、若い母娘の命を奪い、複数の重軽傷者を出す、とても悲惨な事故になってしまいました。
おふたりのご冥福を心からお祈りします。
ことさら「高齢ドライバー」を非難する声もありますが、年齢にかかわらず、安全運転の徹底あるのみです。