ダライ・ラマ14世(83)が、2年ぶりに来日しています。
ダライ・ラマ14世は、11月12日に来日、日本滞在中、東京、横浜、福岡を訪問、仏教法話や公開対談、熊本地震、西日本豪雨、北海道胆振東部地震の犠牲者法要を行い、23日に亡命先のインドへ帰る予定です。
ダライ・ラマ14世は、チベット仏教の最高指導者です。
ダライはモンゴル語で「広大な海」、ラマは「師」という意味だそうです。
ダライ・ラマ14世は、チベット仏教の布教とチベット難民の救済を行っており、非暴力主義に徹して対話による解決を世界に訴え続けています。
1989年、世界平和やチベット宗教と文化の普及に対する貢献が高く評価され、ノーベル平和賞を受賞しました。
一方で同じ頃、ダライ・ラマ14世は、後に地下鉄サリン事件(1995年)を起こして世界を震撼させるオウム真理教が、1989年に宗教法人格を取得する際、東京都に推薦するなど支援したと言われています。
オウム真理教が暴走する前の話なので問題にならなかったのでしょうが、危ない橋を渡るところだったかもしれませんね。
偉大な人には、光と影がつきまとうものなのでしょうか。
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ダライ・ラマ14世が来日、福岡の東長寺で法話を語る
22日、ダライ・ラマ14世による「祈願法要」が、福岡市博多区の東長寺で営まれました。
ダライ・ラマ14世が福岡を訪れるのは2008年以来、10年ぶり2回目になります。
出典元:クロスロードふくおか 東長寺
東長寺は、空海(弘法大師)が日本で最初に創建したお寺と言われています。
空海が開いた真言宗(真言密教)は、中国の西安市にある青龍寺で恵果に学び、日本へ持ち帰った密教です。
密教は7世紀頃、大乗仏教のひとつの宗派として生まれた、とされています。
やがて中国に、9世紀には中国に渡った空海や最澄によって日本に伝えられ、それぞれ真言宗、天台宗として日本の仏教の主流となり、独自に発展していきました。
チベット仏教は、7世紀頃、インドで起こった仏教のうち大乗仏教がチベットに伝わり独自に発展した宗教と言われています。
すなわち、チベット仏教と真言宗は、同じ大乗仏教から派生したので、東長寺はダライ・ラマ14世の法要にふさわしいお寺、ということが出来るかもしれません。
ダライ・ラマ14世は天災、自然災害の犠牲者に祈りを捧ぐ
ダライ・ラマ14世は、一昨年の熊本地震や昨年の北部九州豪雨など、九州で近年相次いだ天災、自然災害の犠牲者らに祈りを捧げ、被災地の早期復興を祈願しました。
法要では、現代を生きる知恵について講演し、他者への思いやりの心を大切にすることなどを説きました。
東長寺の境内には仏教関係者や、九州北部豪雨の被災者など約1,800人が集まり、ダライ・ラマ14世の言葉を聞きました。
ところで、ダライ・ラマ14世は、積極的に世界各地で法話を語っています。
そして訪問する先々で、国や地域に関係する事柄について、わかりやすく説教をしています。
例えば、今年の9月にスウェーデンのストックホルムを訪れたときには、法話で移民問題に言及しています。
ダライ・ラマは、欧州には「現に命の危険にさらされている難民」を支援する「道義上の責任」があるとして、「受け入れ、助け、教育しなさい」と促す一方、難民らは「最終的には母国を発展させなければならない」と説いた。
さらに、「欧州は欧州人のものだと思う」と述べたダライ・ラマは、欧州人は難民に対し、いずれは母国を再建しなければならないと明言すべきだという見方を示した。
ダライ・ラマ14世は、チベット問題に身を置く中、他の国の事情についても深く知り、改善へ向けて自身の考えを示します。
このような面が、ノーベル平和賞たる所以でしょうか。
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ダライ・ラマ14世は中国のチベット支配に反発して亡命
歴代のダライ・ラマは、観音菩薩の化身とされ、死後に生まれ変わりを探す輪廻転生制度によって受け継がれてきました。
ダライ・ラマ14世は1935年に年に今の中国、青海省で生まれ、2歳の時に先代の生まれ変わりとして認定されました。
1959年に中国の支配に抵抗するチベットの人々が蜂起した「チベット動乱」をきっかけに中国による弾圧が強まるとインドに逃れ、以来60年近く、亡命生活を送っています。
チベット自治区に住むチベット族と、中国当局が対立している問題のことを「チベット問題」といいます。
中国とされているチベット自治区は、かつては独立した1つの国家でした。
ところが現在、チベット自治区でのチベット族の政治的な地位の確立と向上を求め、チベット住民とそれを許さない中国当局との間で対立が続いています。
また、中国当局による、過去から現在進行中のチベット族への人権侵害と弾圧も、国際的に注目を集めています。
ダライ・ラマ14世は、これまで中国政府に対しチベット地域の高度な自治を認めるよう平和的に求めてきましたが、中国政府はダライ・ラマ14世を、チベット独立を求める危険人物とみなし一貫して敵視してきました。
ダライ・ラマ14世は、11月20日、超党派の「日本チベット国会議員連盟」の主催により国会内で開催された特別講演で、チベットと中国の関係について言及しました。
その中でダライ・ラマ14世は、改めて中国からチベットの独立を求めない考えを示しています。
さらに、もしチベットが中国の枠内に留まるのであれば、中国の憲法に基づいた全ての権利が与えられるべきで、中国はチベットに経済的利益を、チベットは中国に対して仏教的な背景をもつ精神性という利益を与えることができる、と述べました。
ダライ・ラマ14世から見れば、今や現実的ではないチベットの独立よりも、中国におけるチベット族の人権問題を解決したい、ということが願いなのでしょうか。
ダライ・ラマ14世は83歳、政治的な立場から退いていると本人は表明していますが、今後、チベットと中国の交渉は極めて困難、混迷を深めるでしょう。
後継者選びについて、従来のダライ・ラマ制度では、その死去後に生まれ変わり(輪廻転生)の少年を捜して後継者にする伝統が数百年続いてきました。
しかし、この方法だとダライ・ラマ14世を敵視する中国政府が都合の良い後継者を選び、チベット統治に利用する懸念があります。
ダライ・ラマ14世は、自身の後継者についてはチベットの人々が民主的に選ぶべきだとの考えを示しています。
一方、自身が後継者を選ぶ方法や現行の輪廻転生を続ける選択肢も否定せず、決めるのはチベットの人々次第だとも言っています。
これは日本ではとても考えられないことです。
例えれば、天皇の世襲制をやめ、みんなが良いって言うなら選挙で決めようか、と提案しているようなものですよね。
最高指導者であるダライ・ラマ14世は、そのくらいの絶対的な権力を持っているのでしょうか。
それはさておき、日本はチベットを応援できないのでしょうか。
日本と中国には民主主義を巡る問題で大きな隔たりがあり、特に中国国内の人権問題について、日本は積極的に取り組まなければいけない立場です。
中国におけるチベット人への人権弾圧や宗教の自由の否定などの問題解決に協力することも、長い目で見れば、日中関係の進展につながる日本の大切な役割ではないでしょうか。
ダライ・ラマ14世は、世界の環境問題にも言及しています。
国際社会で具体的にそれを実現するのは、世界各国であり約70億人のひとりひとりです。
強い影響力のあるリーダーが、ポリシーを唱えて、人々を正しい方向へと導いてくれることは大歓迎です。
今後も、ダライ・ラマ14世のような偉人の言葉を聞く機会が、もっとあればいいなと思います。
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