華為技術(ファーウェイ)は、中国通信機器大手企業です。
ファーウェイがアメリカによる対イラン制裁に違反した疑いで、カナダ司法当局は5日、ファーウェイの最高財務責任者(CFO)孟晩舟容疑者を西部バンクーバーで1日に拘束したことを明らかにしました。
孟晩舟容疑者は、ファーウェイの創業者である任正非氏の娘です。
アメリカのメディアによれば、カナダ司法当局はアメリカの要請によりCFOを拘束した模様で、アメリカはCFOの身柄引き渡しを求めています。
アメリカは、中国政府がファーウェイのネットワーク技術をアメリカ人に対するスパイ活動に利用する可能性があるとの見方を示していました。
しかし、アメリカ国内ではなくカナダで幹部を拘束した行為については、やや強引な感じがします。
トランプ政権の仕業だとすれば、わざわざ中国との火種をつくる行為、国際的に波紋が広がりそうです。
ファーウェイは中国通信機器大手、イラン制裁違反か?
ファーウェイは中国で最も有名なIT企業、巨大通信企業であり、世界第2位のスマートフォン・メーカーです。
ファーウェイはスマートフォンや携帯電話の基地局などの通信製品で強いブランド力を持つ、中国を代表する創業約30年の民営企業で、170カ国・地域以上で業務を展開しています。
逮捕されたファーウェイ創業者の任正非最高経営責任者(CEO)は元軍人です。
9兆円超とされる巨額の売上高のうち、毎年1割超を研究開発に向け、特許の国際出願も毎年首位を争うほどの技術力を有します。
スマートフォンの世界シェアはアメリカのアップルを抜き、韓国のサムスン電子に次ぐ2位となっています。
近年、同社の端末はスパイ行為の可能性があるとして調査を受けるなど、アメリカ当局から睨まれる存在でした。
CFOの逮捕は、貿易戦争の渦中にあるアメリカと中国の関係をさらに緊張させる恐れがあります。
関係者によれば、アメリカは、国内で製造した製品を禁止措置に反してイランなどに輸出した疑いで、少なくとも2016年からファーウェイを調査していました。
世界市場に浸透するファーウェイに対し、中国の知的財産侵害を批判するアメリカのトランプ政権は警戒感を強めています。
アメリカや同盟国への通信によるスパイ活動などを通じて安全保障を脅かすとして、同業の中興通訊(ZTE)とともに、アメリカ市場から事実上締め出しを行ってきました。
アメリカ政府は今年4月、イラン制裁違反を理由に、中国通信大手の中興通訊(ZTE)に米企業との取引禁止を科し、これによりZTEは事実上、事業不能状態になりました。
アメリカ政府はその後、取引禁止を解除しましたが、その代わりに罰金の支払いと経営陣の変更をZTEに要求しました。
次のターゲットは、ファーウェイということでしょうか。
アメリカから見れば、ここ10数年の間にアップルを凌ぐまでに成長したファーウェイは脅威、中国とのIT戦争において邪魔な存在といえるのかもしれませんね。
ファーウェイはアメリカの脅威?カナダでCFOを拘束
ファーウェイは、容疑に関する情報はほとんどなく、「孟氏のいかなる不正も把握していない」と述べました。
同社によると、孟容疑者はカナダのバンクーバーで航空便の乗り継ぎ中に拘束されました。
カナダ司法当局の報道官は、7日に孟氏の保釈聴問会を開くとしています。
これまで、ファーウェイの技術はスパイ目的で中国政府に利用される可能性があり、アメリカの国家安全保障の脅威になるとして、米議員らも同社を繰り返し非難してきた経緯があります。
ファーウェイは声明で、「事業展開している地域の輸出規制や制裁に関する法律、さらに国連(UN)やアメリカ、欧州連合(EU)の法規を含む、あらゆる関連法」を同社は順守していると述べました。
在カナダ中国大使館は6日、声明を発表し、アメリカの要請によりカナダ当局が「いかなる米国法にもカナダ法にも違反していない」中国国民を逮捕したと述べました。
さらに、「中国側は米国およびカナダ側に対し、厳しく抗議した。間違いをすぐに正し、孟晩舟氏の自由を回復するよう強く要請した」と付け加えました。
このところアメリカ政府は、サイバーセキュリティ上の脅威やアメリカの対イラン経済制裁の違反を理由に、中国のIT関連企業を標的に、法的措置を取る機会を増やしています。
アメリカ政府の言い分は対イラン経済制裁の違反としていますが、実際は、中国のIT技術の国際的な拡大を阻止することが目的と思わざるを得ません。
アメリカは、自国のIT技術の伸び悩みやIT業界の育成がおろそかになっていないか、現実にも目を向けるべきです。
また、アメリカの同盟国である日本も、対岸の火事とせず自国のIT技術を磨くべきでしょう。
ファーウェイ問題で米中摩擦の懸念、日経平均大幅下落
ファーウェイは、日本でも存在感を強めています。
調査会社「MM総研」によると、今年度上半期(4~9月)のスマートフォンの出荷台数のシェアで、ファーウェイは7.6%と、前年同期より4.9ポイントの伸びを示しました。
メーカー別の順位では、アップル(アメリカ)、シャープ、ソニーモバイルコミュニケーションズ、サムスン電子(韓国)に次ぐ5位に、初めて食い込んでいます。
以前は、格安スマホ事業者などが扱う「SIMフリー」の端末が中心でしたが、今年からNTTドコモなど携帯大手3社が扱う端末に採用され、販売数を大幅に増やしました。
10万円を超える高額機種もあり、性能的にはアップル、サムスンと遜色ないところまで来ている、と言われています。
中国通信機器大手、ファーウェイの幹部がアメリカの要請を受けてカナダで逮捕された報道により、市場に米中貿易摩擦の激化への懸念が広がり、6日、東京株式市場の日経平均株価は大幅に下落しました。
日経平均の下げ幅は一時600円を超え、終値は前日より417円71銭(1.91%)安い21,501円62銭と3日連続の下落で、10月30日以来、約1カ月ぶりの安値水準となりました。
日経平均は朝方から幅広い銘柄が売られて全面安の展開、特に中国向けビジネスが多い電子部品や機械、電機の下げが目立つなど、ファーウェイ問題で大荒れとなったようです。
それにしても、「ニッポンの技術」はどこに消えていってしまったのでしょうか。
国際市場において、スマートフォンだけでなく、テレビを始めとする多くの家電製品も韓国や中国の製品の影に隠れつつあります。
ファーウェイ問題に鑑み、日本のIT技術の存在感の薄さに気付かされたりもするわけです。
がんばれ、ニッポン!