日本政府は14日、アメリカ普天間基地の移設のため、名護市辺野古の埋め立て予定地の海に土砂の投入を開始しました。
これを機に、政府が移設工事を本格化させる動きに対して、沖縄県は反発を強め対抗措置を検討する考えで、対立は激しくなる一方です。
日本政府をアメリカ依存症と揶揄する声も上がる中、沖縄をめぐるいびつな日米関係は戦後70年を過ぎても終わることがなく、基地移設問題に関しても抜本的な解決が求められています。
辺野古埋め立てに見る日本政府のアメリカ依存症
これまで辺野古埋め立てについて、日本政府とアメリカ政府は、普天間基地の継続使用を避けるための唯一の解決策であるという考えを示してきました。
また、名護市辺野古の埋め立て予定地の海に土砂の投入を始めたことに対して、アメリカ国務省の当局者は、日本政府と連携して移設計画を進める考えを強調しました。
そして、土砂の投入が始まって2日目の15日、岩屋防衛大臣は、「移設は日米同盟のためではなく、日本国民のためだ」などと述べ沖縄県の理解を粘り強く求めていく考えを重ねて示しました。
しかし、この発言は詭弁ではないでしょうか。
確かに、普天間基地を返還してほしい、なくしてほしいというのは沖縄県民の願いですが、県内の別の場所への基地移設を望んでいるのではありません。
沖縄県民は、基地そのものをやめてもらいたい、というのが本心のはずです。
日本政府は、アメリカ軍の基地を返還する気持ちは毛頭なく、代わりにもっと機能性に優れた基地を差し出したい、危険な市街地ではなくアメリカ軍にとっても安全に使える基地を提供したい、と考えているわけで、日本国民のためを考えているとは到底言えません。
日本の国防上、沖縄県のポジションが重要な位置にあり、そこに基地を置くのは国民のため、と言いたいのでしょうが、そこにはアメリカ軍が駐留するのですから、アメリカにとっての利益になるのではないでしょうか。
沖縄県では、日本はアメリカの支配下にあり、軍事的なアメリカ依存症は続いていくわけです。
長年に渡って沖縄県を悩ませるいびつな日米関係
沖縄県の玉城デニー知事は埋め立て事業の手続きに違法性があるとして12日に防衛局に行政指導していました。
しかし、政府は沖縄県の工事中止の求めには応じず、事前に通知していた14日の土砂投入を強行しました。
2017年4月に政府が海上での護岸建設に着手して以降、本格的な埋め立て作業は初めてで、新基地建設は新たな段階に入ります。
一方で玉城知事は、今後想定される大浦湾側の地盤改良に伴う設計変更の承認権限も行使しながら新基地建設阻止に取り組む構えを崩していません。
よって、このまま埋め立て作業が国の計画通り進むかどうかは、今のところ見通しは立っていません。
ところで、長年に渡って沖縄県は、県内でのいびつな日米関係に悩まされ続けています。
その代表的な悩みのタネは、不平等な日米地位協定に守られるアメリカ兵の犯罪などです。
日米地位協定は、日米安全保障条約の目的達成のために我が国に駐留するアメリカ軍との円滑な行動を確保するため、アメリカ軍による我が国における施設・区域の使用と我が国におけるアメリカ軍の地位について規定したものであり、日米安全保障体制にとって極めて重要なものです。
出典元:外務省ホームページ 日米地位協定Q&A
とありますが、日米地位協定を一言でいえば、『在日アメリカ軍と軍人、軍属、家族は、日本の法律に縛られないで自由に行動できる』という取り決めです。
日米地位協定は、補足協定など運用の見直しが行われたことはありますが、1960年の締結から58年間、一度も改定されることなく今日に至っています。
アメリカと日本は戦勝国と敗戦国、という立場から始まった日米の関係において、憲法上、軍隊を持てない日本が選んだ道が、安全保障をアメリカに委ねることと引き替えに基地を提供することでした。
日米地位協定により、日本に駐留するアメリカ軍には特別な権利が与えられ、特に沖縄県で、県民がその被害を被っているのです。
日米地位協定の改定とともに、アメリカと日本の平等化を図ることこそ、政府の務めではないでしょうか。
日本政府のアメリカ依存症はいつまで続くのか?
そもそも、なぜ普天間基地は移設することになったのでしょうか。
きっかけは1995年、沖縄で起きたアメリカ兵による少女暴行事件でした。
日本の中で唯一、沖縄には戦後27年間、アメリカ軍に支配された歴史があります。
日本に復帰して20年以上たった時に起きた事件は、沖縄に相変わらずアメリカ軍基地が集中する現実や、捜査のやり方の一部が制限されるといった日米地位協定によるアメリカと日本の不平等性を浮き彫りにしました。
少女暴行事件の後、同年10月に開かれた県民大会には約8万5千人が参加、慌てた日米両政府は96年4月、普天間基地の返還に合意しました。
普天間基地は、宜野湾市の面積の4分の1を占め、周囲を市街地に囲まれており、大変危険だとの声が地元から上がっていました。
その後、政府は普天間基地の移転先を沖縄本島北部の辺野古に決定、約160ヘクタールを埋め立てて2本の滑走路を造り、そこに普天間の機能を移す計画を推し進めています。
沖縄では受け入れをめぐって紆余曲折を繰り返しましたが、政府は、辺野古移設はアメリカと約束したこととして見直す考えはありませんし、県も反対は県民の民意として譲るつもりはありません。
日本とアメリカの約束 VS 沖縄県民の民意、政府は沖縄県よりアメリカの肩を持つ、という構図でしょうか。
今年の8月8日に急逝した翁長雄志前知事は、「沖縄でこれから起きることを見て、国民全体で考えてほしい」と訴え続け、日本の国土面積の0.6%の沖縄県に、米軍専用施設の74%が集中する現状をどう考えるのか、国際情勢が複雑化する中、基地負担を誰が引き受けるのか、と地方自治や民主主義のあり方を問いかけてきました。
翁長知事の逝去を受けて行われた沖縄県知事選挙(9月13日告示、9月30日投開票)では、「辺野古に新基地は決して造らせない」という翁長前知事の強固な遺志を受け継いだ玉城氏(前自由党衆院議員)が政権与党などが推す前宜野湾市長の佐喜眞淳氏に、8万票以上の大差をつけて圧勝しました。
玉城市の圧勝は、多くの沖縄県民が辺野古新基地地建設を強引に進める日本政府の強引な手法に対して断固ノーという強い意志表示をあらためて示す結果となりました。
しかし政府は、知事選での玉城氏の圧倒的勝利であらためて示された沖縄の民意を無視してあくまでも辺野古新基地建設を強行する姿勢を取り続けています。
政府と沖縄県の対立、このような事態を打破するために必要なことは何でしょうか。
まず、本土で暮らす、沖縄県民以外の国民が関心をもつことが第一でしょう。
国のために、どこかに基地を置かなければならないし、沖縄に我慢してもらえば良いのでは、と思っている人もいるかもしれませんが。
まず事実を知りましょう、辺野古埋め立てが何故ニュースになっているのか、普天間基地移設問題とは何か、日米地位協定とはどんな約束か。
これらを理解することで、沖縄県民の心理や置かれている立場を知り、日本政府への期待や要望が湧き上がってくるはずです。
当事者の立場で考えることこそ物事の解決に最も必要なこと、沖縄県のこと、みんなで考えていきましょう。