22日夜、津波が発生、原因はクラカタウ火山の噴火と見られています。
インドネシアのスマトラ島とジャワ島の間のスンダ海峡で起きた津波による被害で、国家災害対策庁によれば、これまでに多数の死傷者、少なくとも426人が死亡、29人が行方不明と報道されています。
地震は発生しておらず、気象当局は火山噴火による海底の土砂崩れが原因としています。
首都ジャカルタにあるンドネシア日本大使館によると、日本人が死傷したとの情報は入っていません。
国家災害対策庁によると、被害を受けたのはジャワ島西端バンテン州とスマトラ島南端ランプン州の沿岸部で、観光地のビーチがあり、多数のホテルや住宅が被災しました。
被害情報を収集中で、死傷者はさらに増える恐れがあるとしています。
東日本大震災の影響が大きく、南海トラフ巨大地震への警戒感もあり、私たち日本人は津波の原因は地震と考えがちですが、火山の噴火が原因ということもあるのですね。
津波の原因はクラカタウ火山の噴火による海底の土砂崩れ
気象当局によると、津波の原因は、新月による大潮(満月による潮位が高い状態)に重なって、クラカタウ火山の噴火による海底での地滑りが起きたため、とみられています。
アナク・クラカタウ(Anak Krakatoa、クラカタウの子の意)は、ジャワ島とスマトラ(Sumatra)島を隔てるスンダ海峡に位置する小さな火山島で、1883年に起きたクラカタウ火山の大噴火の半世紀後に海上に姿を現しました。
クラカタウ火山を含め、インドネシアには127の活火山があります。
23日、航空路火山灰情報センター(VAAC)によると、インドネシアのクラカタウ火山(KRAKATAU 813メートル)の噴火で、噴煙が火口から約1万6千メートル(海抜5万5千フィート)まで上がっている模様です。
アナク・クラカタウでは、昨日までも数百メートルの高さまで噴煙を上げる噴火を続けていましたが、これをはるかに超える規模の噴火となっています。
インドネシアのスマトラ島とジャワ島の間のスンダ海峡で起きた津波について、付近では規模の大きな地震は発生しておらず、気象気候地球物理庁(BMKG)によると、スンダ海峡付近にあるアナク・クラカタウ火山の活動が原因とみられるが、詳細は調査中と発表しています。
インドネシアは火山国ということですが、地震、台風もあり、人々は常に自然災害の脅威にさらされています。
しかしながら人口は増え続け、インドネシアは2018年に2億6,500万人を超え、中国、インド、アメリカ合衆国に次ぐ人口ランキング第4位の大国となっています。
世界の名目GDPでは、世界16位ですが、人口の伸びに比べて2次曲線的に成長を続けていますし、インドネシアはいずれ、中国、インドに迫る可能性も秘めていると言えそうです。
少子高齢化で先細りの日本から見ると、インドネシアは伸びしろがたっぷりとあります。
インドネシアは自然災害に悩まされつつも、毎年5%前後の経済成長を継続しているたくましい国なのですね。
インドネシア・ジャワ島とスマトラ島の間にあるスンダ海峡
スンダ海峡は、最も狭いところでは幅が25キロほどの海峡で、インドネシアのジャワ島とスマトラ島の間にあります。
海峡の近くの島には、クラカタウという活発な活火山がありますが、気象庁によりますと、1883年の大噴火では、津波などによって3万6000人が死亡したという記録があります。
津波による被害は、首都ジャカルタから約100キロ離れたジャワ島西部の海岸沿いの地域に集中しているようです。
防災当局の発表によれば、これまでに430棟の建物への被害が確認され、9つのホテルが大きな被害を受け多数の船も損壊したということです。
インドネシアの新聞は、津波が発生した当時の住民の証言を伝えています。
「22日の日中からすでに海面が高い状態が続いていたが、午後7時くらいにいったん、潮が引いた。
しかし10分後に大きな波が押し寄せ、そのあとも海面はどんどん上がり続け、海沿いのホテルの床の高さまで達した。
街は住民や観光客でごった返していて皆パニックになり津波、津波と叫んでいた。
誰もが海から高台に避難しようと必死だった」
と話しています。
津波から逃れるためには、高台に避難することが鉄則と言われますが、津波が来るという判断のタイミングが重要になってきます。
大きな地震であればすぐに津波も警戒しますが、火山の噴火の場合も気をつけなければいけない、ということですね。
クラカタウ火山、津波や火砕流にも警戒|日本も教訓に
クラカタウは活発な火山で、周辺海域で形状を変えながら活動を続ける火山島群の総称です。
1883年の大噴火では噴煙は対流圏界面を突破して成層圏に達し、発生した津波は周囲の沿岸に被害をもたらしただけでなく、遠く離れた日本やフランスでも観測された記録が残っています。
アナク・クラカタウは、20世紀になってから海面に出現した火山島です。
大規模な噴火により斜面が崩壊した場合には、津波が発生する可能性があります。
同様の事例は日本国内でも起きており、雲仙岳の眉山が崩れて有明海に流れ込み、津波が対岸の熊本を襲った「島原大変肥後迷惑」が有名です。
また、火砕流も海上を流れて対岸に到達する可能性があるため、同様に警戒が必要です。
島原大変肥後迷惑(しまばらたいへんひごめいわく)とは
寛政4年4月1日(1792年5月21日)の肥前国、現在の長崎県・島原の雲仙岳噴火では、東端の前山(現在の眉山)が大崩壊して多量の土砂が有明海に流入し、発生した津波が対岸の肥後国、現在の熊本県を襲っています。
死者は1万5000人以上という、日本最大といわれる火山災害となっています。
熊本県では、この災害を「島原大変肥後迷惑」として伝承しています。
大災害の記録を残す名前としては、ちょっとユニークなネーミングにも聞こえますが、名称とは裏腹の日本最大の火山災害だったのですね。
この災害は火山災害でありながら、地震、土砂災害、津波と多くの要素が重なった最悪の災害となったそうです。
おりしも島原藩は藩主松倉重政の悪政や寛永14年(1637年)の島原の乱で領内が荒廃、ようやく復興を遂げた矢先に訪れた災難でした。
そしてまさかの甚大な被害を被った対岸の肥後にとっては、想定外の大災害となりました。
島原大変肥後迷惑から226年の間にも、雲仙岳は何度か噴火を繰り返しています。
インドネシアと同じように、日本も火山国、地震や津波、台風が重なれば、大災害となる恐れがあります。
気象庁によれば、日本の活火山の数は現在111、インドネシアの127に匹敵する数字です。
私たちも、地震を警戒するだけでなく、最寄りの火山の噴火にも注意を払う必要がありそうですね。