横綱の稀勢の里は、9日の二所ノ関一門連合稽古(げいこ)で好調さを披露、納得の表情を見せました。
13日に初日を迎える大相撲初場所へ向けて、期待を抱かせる稽古内容でした。
大相撲初場所(東京・両国国技館)に向け、二所ノ関一門の連合稽古が、東京都江東区の尾車部屋で行われました。
進退を懸ける横綱の稀勢の里は同じ相手と続けて相撲を取る三番稽古で、九州場所で優勝した関脇の貴景勝と9番取り、復調をアピールしました。
稀勢の里、二所ノ関一門連合稽古で納得の表情
稀勢の里は、二所ノ関一門連合稽古を終えたあと、
「とにかく前へ前へと思ってやった。
非常に良い稽古になった。
初日までしっかり調整したい」
と手応えを掴んだ様子で、納得の表情を浮かべました。
稽古を見た元横綱の北の富士勝昭さんは、
「下半身がしっかりしてきた。
思ったより状態は良い。
少しは期待が持てる」
といつもの辛口ではない口調でコメントしました。
強者の貴景勝に8勝1敗、13日から大相撲初場所
突っ張りが持ち味の貴景勝に対して、稀勢の里は得意の四つ身にはこだわらず、突き押し相撲で応戦しました。
稀勢の里は貴景勝の動きにしっかり対応し、圧力を受け止め、逆に押し込んで力強さを見せました。
その結果、8勝1敗で稽古を終えました。
2日前の7日に行われた、横綱審議委員会(横審)の稽古(けいこ)総見では、稀勢の里は、横綱の鶴竜や大関の豪栄道と計6番を取りましたが、押し込まれる場面が多く不安視されていました。
しかし、豪栄道との相撲では左右への動きに柔軟に対応し、状態は悪くない、との声もありました。
横審の北村正任委員長(毎日新聞社名誉顧問)は
「稀勢の里の気力は感じた。体もかなり戻っている。
あとは相撲勘を早く取り戻してほしい」
と語っていました。
横審『激励』決議、稀勢の里の心中や如何に
稀勢の里は昨年11月の九州場所で、横綱として87年ぶりに初日から4連敗(不戦敗を除く)して途中休場しました。
そして、場所後の横審で初の「激励」が決議されました。
稀勢の里は、横綱在位11場所で皆勤はわずか2場所にとどまっています。
「激励」は横綱審議委員会(横審)が、ついにしびれを切らしたという意思表示でしょう。
「激励」は決議の中では最も軽いものですが、不祥事以外での決議は初めてのことです。
稀勢の里は、相撲人生で土俵際に立たされた、背水の陣と言っても過言ではありません。
横審は過去に不祥事を起こした朝青龍に引退勧告を決議したことがあります。
しかし、この時は朝青龍が引退表明をした直後に行われたので、実効性はありませんでした。
今回は、事実上初めて実効性のある内規に基づく決議です。
横審の山内昌之委員(東京大名誉教授)は、
「珍しいだろう。
これまで寛大に来たが、いつまでも可能か」
と、過去にない決議について明かしました。
初場所は進退がかかることになりますが、稀勢の里の師匠の田子ノ浦親方(元前頭・隆の鶴)は、
「来場所というか、次の場所に中途半端にしないで、しっかりした形で出るようにしないといけない」
と出場に言葉を濁していましたが、出場しないという選択肢は、もはや難しいようです。
「激励」は、全員の署名をしてまとめた決議です。
内容ほど軽くはありません。
稀勢の里には、唯一の日本人横綱としての期待や、結果を求められるプレッシャーが大きくのしかかりますが、なんとかこの難局を乗り越えて、平成の次の時代へつないでほしい、強くそう思う次第です。