千葉県野田市の小学4年、栗原心愛(みあ)さん(10)が自宅で死亡し、両親が傷害容疑で逮捕された事件(千葉女児虐待事件)で、母親が心愛さんを監視し、父親にLINEなどで様子を報告していたことがわかりました。

出典元:毎日新聞Web版 千葉女児虐待 事件当日、倒れこむ女児を立たせる

また、事件当日、長時間立たせられ、疲れてふらついたり倒れ込んだりした心愛さんを、父勇一郎容疑者(41)が再び立たせていたことが6日、捜査関係者への取材で明らかになりました。

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千葉・野田市で1月24日に亡くなった栗原心愛さんをめぐっては、母親のなぎさ容疑者(31)が、

「娘を1カ月ほど外出させていなかった。夫の勇一郎容疑者に、『外に出すな』と言われていた」

と供述していることがわかっています。

それにしても、最低の両親、許せない、の度を越えています。

共犯で逮捕された母親については、恐怖心で我が子を父親の虐待から救うことができなかった、というところまでは同情の余地がありましたが、父親にLINEで様子を報告していた、という実態が明らかになると、様々な疑問が湧いてきます。

常識的に考えると、父親が不在のときは、隠れて子をいたわるはずだと思いますよね、母親なんですから。

同じような立場に立ったとき、自分ならどうしたかを考えると、この事件はありえない結果だと思いますが、歪んだ夫婦関係がその背景にありそうです。

 

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千葉女児虐待死亡事件、最低で許せない母親のLINE報告

捜査関係者によると、母なぎさ容疑者の供述などから心愛さんが亡くなるまでの約1カ月間の状況が判明しました。

両親に外出を禁じられた心愛さんは少なくとも事件の数日前から十分な食事を与えられていなかったとみられています。

なぎさ容疑者は心愛さんの様子を無料通信アプリ「LINE」で勇一郎容疑者に報告していたと供述しているようです。

母親の逮捕には、父親からの恫喝などによるものと同情を寄せる意見もある中、最低で許せない、と批判の声も聞こえてきます。

勇一郎容疑者の東京都内の勤務先によると、正月休み明けの1月7日から出勤した勇一郎容疑者は、体調を崩したとして早退した同21日以降、

「インフルエンザにかかった」

と言って休んでいました。

一方、市などによると、心愛さんの通う小学校に同7日、

「娘は冬休みに妻の実家の沖縄に滞在しており、休ませる」

同11日には、

「曽祖母の体調が悪いので1月いっぱい沖縄にいる」

と連絡しています。

なぎさ容疑者は逮捕前の任意聴取に、

「(勇一郎容疑者が)過去にも何度も立たせることがあった。

やめてと言ったが、聞いてもらえなかった」

と話しました。

しかし、心愛さんの体には以前のあざが複数あったことから、県警は心愛さんが亡くなるまでの約1カ月間は、虐待の発覚を恐れて沖縄に滞在しているように2人で装っていた可能性があるとみています。

勇一郎容疑者から連絡を受けた学校は野田市や柏児童相談所に連絡しましたが、学校、市、児相とも自宅訪問や所在確認をせず、亡くなる2日前にあった児相や県警野田署が参加する市の要保護児童対策地域協議会でも心愛さんのことは議題に上らなかったとのこと。

県警によると、両親は共謀して1月24日の朝から夜まで、冷水のシャワーを掛けたり、首付近を両手でわしづかみにしたりしてけがをさせたとして逮捕されました。

 

凶暴さと穏やかさを使い分けた?父親の不気味な二面性

栗原一家と同じアパートの男性十人は、

「木曜日(1月24日)の深夜0時近くにパトカーと救急車がうるさくて、玄関を開けてみたら(勇一郎容疑者が)連行されるところでね。

顔が真っ白だったのを覚えています。

うなだれていて、青白いを通り越して真っ白な顔だった」

と話しています。

「丁寧でしっかりした人という印象しかありません。虐待とは真逆のイメージです」

と続けました。

心愛さんは容疑者と母親、妹(1)の4人暮らし。

勇一郎容疑者の態度は家の中では一変、暴力で家族を支配していたと思われます。

事件発覚の経緯について、捜査関係者は、

「24日午後11時08分、容疑者本人から110番がありました。

『10歳の娘を風呂場に連れて行ってもみ合いになり、静かになり、呼吸がない』との通報でした。

心愛さんは心肺停止状態で、あご付近に軽い死後硬直が始まっていた」

と語っています。

心愛さんは、冷水を浴びせられたためスウェット上下は濡れていて、はだし。

髪の毛があちこちにちらばり、Tシャツに隠れた身体には、古いあざのようなものが複数確認されましたが、

「死因に至るような大きなケガ、外傷はありませんでした。

病死以外の何らかの原因で死亡したものと判断しています」

と前出の捜査関係者は説明しました。

勇一郎容疑者は、日常的に家族を暴力的に支配していましたが、職場では低姿勢で人当たりのいい別の表情を見せていたそうです。

昨年4月から在籍する沖縄コンベンションビューロー東京事務所の上司は、事件と勇一郎容疑者が結びつかないと言います。

「非常に温厚で穏やかでコミュニケーション能力もあり、慕われていました。

どんな人にも正しい敬語を使って、自己主張もしないし、人と意見がぶつかることもなく、みんなから頼られていました。

彼を悪く言う人はいません」

酒癖は普通、ニコニコと人の話を聞き、トラブルもなし。

広島カープのファンで、家族の話もしょっちゅう。

「娘さんを“上のお姉ちゃん”と“下の子”と呼んでいました。

上のお姉ちゃんの運動会だったとか授業参観だったとか、学校行事のことをよく話していました」

と前出の上司は、勇一郎容疑者について一定の評価をしているようでした。

一方で、そんな外面のよい父親について心愛さんが、友達同士の会話で「お父さんが怖い」と本音をもらしていたことがあったといいます。

家の中と外では全く別の顔、凶暴さと穏やかさの二面性を使い分け、「しつけ」と称した暴力でわが子を死に追いやった父親。

我が子を虐待、いったい何が原因だったのでしょうか。

その根っこにはいったいどんな闇が広がっていたのでしょうか。

 

なぜ、野田市、児童相談所は致命的なミスを重ねたのか

両親の心愛さんへの虐待について、野田市や児童相談所のミスが致命的であったと批判を受けています。

心愛さんが虐待を否定する文章を書いたことを児童相談所は不審に思いながら、父親の元に戻していました。

心愛さんからうそだと直接告げられても手を打ちませんでした。

なぜ児童相談所は致命的ミスを重ねたのか、社会全体の問題として解明する必要があります。

2017年11月、学校のいじめアンケートに心愛さんが、

「お父さんにぼう力を受けています」

と書いたことから、千葉県柏児童相談所は心愛さんを一時保護しました。

18年2月、児相は心愛さんを自宅に戻すかどうか判断するため父親と面会しましたが、この時点ですでに父親は市教委からアンケートのコピーを受け取っていました。

その上で父親は、心愛さんが書いたとする、

「お父さんに叩かれたのは嘘です」

「児童相談所の人にはもう会いたくない」

という文書を見せ、

「今日にも連れて帰る。名誉毀損で訴える」

と強く迫りました。

小学4年生にしては不自然な文面なのに、児相は心愛さんに確認しないまま自宅に戻す決定をしました。

これが、第一の致命的ミスです。

翌3月、心愛さんは学校で児童相談所職員と面会しました。

心愛さんは、母親から「こういう手紙を書くように」という父親のメールを見せられて書いたものであることを打ち明けました。

虐待されていることを否定する文章を書かせること自体が虐待、その時点でどうして心愛さんを保護しなかったのでしょうか。

せめて警察などと連携して父親に確認すべきではなかったのでしょうか。

これが、第二の致命的ミスです。

児童相談所は今になって「最初から書かされた可能性があるとは思っていた」としています。

つまり、うそだと気づきながら目をつぶっていた、と言っているわけです。

児童福祉法の改正のたびに児相や学校、警察などの連携強化が図られてきました。

児相には専門職の増員や研修の充実、弁護士の配置も定められ、安倍政権はさらに4年間で職員を2,890人増やすそうです。

しかし、今回の問題は、そのような体制の強化だけで解決できるとは思えません。

児童相談所は、子どもの駆け込み寺、家庭からの逃げ場所、一時保護だけでなく長期的に命を守る拠り所という幅広く重い任務を任されています。

これについて、厚生労働省は児童相談所の概要の中で、

「従来は、あらゆる児童家庭相談について児童相談所が対応することとされてきたが、近年、児童虐待相談等の急増により、緊急かつより高度な専門的対応が求められる一方で、育児不安等を背景に、身近な子育て相談ニーズも増大しており、こうした幅広い相談全てを児童相談所のみが受け止めることは必ずしも効率的ではなく、市町村をはじめ多様な機関によるきめ細やかな対応が求められている。

としています。

さあ、市町村をはじめ多様な機関によるきめ細やかな対応、とは具体的にどんなことなのか、私たちも一緒に考えていかなければいけないと思います。

虐待なんて自分の子どもには絶対しない、と思っている人が、可愛さ余って憎さ百倍でそうならないとも限りませんし、隣で子どもが泣き叫ぶ日が数日続くこともあるでしょう。

それを他人事とせず、自分のこととして捉えることができるのか、面倒なこととせず積極的に解決に関わることができるのか問われることになる、ということですね。

少子化が進む日本で、子は宝、身近な問題として捉え、子どもたちの命を守っていきましょう。